2013年3月29日金曜日

音読療法のポテンシャル(もっともっとお役に立つはず)

photo credit: ccarlstead via photopincc

2級ボイスセラピスト講座を受講して資格取得した方から、こんな話を聞いた。
長女の出産後の里帰り、次女の就職と引越し、夫の単身赴任からの帰任などが重なって、多忙を極めているとのこと。
こんなとき、貴重な睡眠時間を一分でも多くとるために、寝る前に音読療法の呼吸法を使うことで入眠がスムーズなり、たすかっているとのこと。
そういう具体的な話を聞くと、私もうれしく思う。

音読療法が作る落ち着いた身体、ストレス耐性が強く集中力のあるメンタル、免疫力を高めるエチュードなど、私自身も日常で非常に役立っているのだが、もっとお役に立てることができるはずだと思っている。

受験生にどうだろうと思って、知り合いの予備校の関係者に相談してみたところ、大変興味を示してくれた。
試験本番であがらないようにしたり、集中力を高めたりできる。
また、長い受験勉強期間にも体調を整えたり、ストレスに対処できるスキルを身につけたり、免疫力の高い身体をつくったりして、しっかりと勉強できるようにすることの役に立つと思う。
また、受験生を持つ親のための音読療法プログラムもありえるだろう。

前からいってたことだが、ストレスフルでハードな職場でも音読療法は役に立つだろう。
新入社員のうつ病予防や、管理職のストレス対策、職場の人間関係、健康維持にも効果を発揮できるのではないかと思っている。
これらのことはこれまで多く開催してきたさまざまな場所での音読ケアの実感や結果をもとにしていえることである。

こういったさまざまなプログラムが実際に動きはじめたら、もちろん私ひとりでは対応は無理だし、いまいる音読療法士にも手があまることになっていくと予想できる。
なのでできるだけ早期に講師育成プログラムを立ちあげたいと思っているのだが、現時点でなかなか受講者が集まらず、停滞している。
興味がある方はまずは気軽にご相談ください。
(オーガナイザー・水城ゆう)

ママカフェ第一期終了、音読療法新企画

昨日は朝からママカフェこと「お母さんのための音読カフェ」の、助成金をいただいて開催してきた今期の最終回だった。

子育て中のお母さんが、子どもや夫のために毎日をすごしているばかりではなく、ときには自分自身をきちんとケアしてあげよう、その方法を身につけてもらおう、という目的で、ボイスセラピストの藤沢さんが中心になり、藤沢さんが運営しているグループの主催という形で助成金を申請し、開催してきた。
告知や準備が大変で、参加者を集めるのにだいぶ苦労されたようだが、得るものも多く、私も音読療法の有効性をあらためて確認できてありがたかった。

藤沢さんがリードした今期は終了したが、ママカフェは交代しながらつづけていこうという話になっていて、次期の開催についてまたあらためてアナウンスできるときが来ると思う。
そして音読療法については、もっとさまざまなニーズが掘り起こせるはずと感じていて、あたらしい企画を始動させる予定だ。
たとえば「受験生のための音読療法」といった企画ね。

ほかにこういう企画をやってほしい、というものがあれば、気楽にご相談ください。
(オーガナイザー・水城ゆう)

2013年3月28日木曜日

おかあさんのための音読カフェ

*おかあさんのための音読カフェ*
 〜わたしに耳を澄まそう〜

子育てはわたしのだいじなしごと。
だいじなこどもをたいせつにそだてるだいじなしごと。
でも わたしのこと、ちゃんとだいじにしてますか?

こどもを、家族を、生活をだいじにはぐくむために
まずはじぶんをだいじにする方法を学びましょう。
自分をおちつかせる呼吸法とたのしい工夫をこらした音読、フードコーディネーターのみやこさんお手製のカフェメニューを楽しみながら築77年の古民家で、ゆったりしたひとときをすごしましょう。

◎日時 2013年1月31日(済)/2月28日(済)/3月28日
    いずれも木曜日10時30分〜12時30分

◎対象 お母さん(各回8名)
   ※託児を希望される方はご相談ください。
    有償ボランティアさんをお願いします( 保険なし)。

◎参加費 1000円/回(茶菓代込み)
    ※託児料500円/人

◎会場 世田谷区羽根木1-20-17(現代朗読協会・羽根木の家)
    井の頭線新代田駅徒歩2分、東松原駅徒歩3分
    井の頭線沿い・中丸橋北側すぐ左=西側の大谷石の塀の古民家

申込 ginnosigi@gmail.com または 080-1168-2689(藤沢)
主催 サークルおひさま
協力 音読療法協会 http://www.voicetherapy.org/

世田谷区こども基金の助成を受けて実施しています。

2013年3月27日水曜日

音読療法マスターコース受講説明会(無料)ネット参加も可

音読療法(ボイスセラピー)の最終資格、音読療法士(マスター)にチャレンジしませんか。

音読療法士(マスター)になるにはほぼ一年間のマスターコースを受講し、さらに二年間のインターン期間を経る必要があります。
大変な資格ですが、その分やりがいと将来性もあります。
マスターコースの概要についてはこちらをご覧ください。

マスターコースに興味がある方のために、以下の要領で無料説明会を開催します。

◎日時 2013年3月27日(水)
    14:00〜15:00(昼の部)/19:00〜20:00(夜の部)

◎場所 現代朗読協会・羽根木の家(京王井の頭線新代田駅徒歩2分)
    またはGoogle+のHangout機能を使ってのオンライン
    参加希望の方は事前にお申し込みください。地方・国外歓迎。

◎参加費 無料

※オンライン参加を希望の方はあらかじめGoogle+にアカウント登録をお願いします。
 よくわからない方は気楽にお問い合わせください。
※参加申し込みはこちら(お問い合わせフォーム)から。

2013年3月24日日曜日

3月の2級ボイスセラピスト講座のお知らせ

声で癒し、癒される……自分の持つ「声」で人を安らわせることができたら、どんなにいいでしょう。そして、自分の「声」が自分をも落ち着かせ、癒してくれたら、どんなにいいでしょう!
声による療法の基礎を身につける「ボイスセラピスト2級」を受講、取得して、身近な人とのコミュニケーションに活用してみませんか。
お子さん、パートナー、親、友人、同僚などとのつながりを、柔らかく心地よいものにしたいと願う方に。

これまでにボイスセラピスト2級の資格を取得された40名近くの方が、すでにそれぞれ活躍されています。
築80年の古民家でじっくりと学んでいただきます。

◎日時 2013年3月24日(日)10:00〜17:00
◎場所 現代朗読協会「羽根木の家」(京王井の頭線新代田駅徒歩2分)
◎受講費 33,000円(2級資格取得料および音読療法協会年会費を含む)

◎主催 音読療法協会
 協力 現代朗読協会

◎内容
 ボイスセラピーの基礎知識
 声と身体とこころの基礎知識
 声と身体の関係、声とこころの関係の確認
 ボイスセラピーのさまざまな事例を用いたノウハウ学習
 ボイスセラピストに必要なコミュニケーション法
 参加者同士によるセラピー実践体験

◎こんな人におすすめです
 子どもなど家族に心身の不調を訴える人がいる
 落ちこんでいる友だちの気持ちを楽にしてあげたい
 ささいなことが気になって眠れない
 あがり性を克服したい
 ひと前に出るとうまく話せない
 声が通らない
 よく聞き返される
 家族や他人とのコミュニケーションでいらいらすることが多い
 ひと前で話すことが多い職業についている
 落ちついた話し方や態度を身につけたい

※お申し込みはこちら

【特別割引制度】
学生や主婦、その他現在収入が低かったりなかったりする方のための特別割引制度があります。
基本的に半額になりますので、遠慮なくご相談ください。ボイスセラピスト講座受講への必要性と現況についてのレポートを提出していただきます。
くわしくは音読療法協会までお問い合わせください。

2013年3月6日水曜日

ま、まさか! 花粉症がなおった?

自分でもちょっと信じられないのだが、今年はなんだか花粉症の症状がまったく出ないか、出てもすごくかるいのだ。

私が重度の花粉症であることは、身近な知り合いならみんな知っている。
30代の前半に発症して、以来20年にわたって苦しみつづけてきた。
アレルゲン検査も受けたことがあって、複数の種類の花粉、枯葉、ハウスダストでアレルギー症状が出ることがわかっていた。

市販薬をふくめいろいろな薬をためしてみたが、最近はアレグラという種類を医者で処方してもらっていた。
市販薬はとくに眠気が出たり、喉がやたらと乾いたりと、身体に合わなかった。
マスクも面倒だし、目もしょぼしょぼする。
一時は点鼻薬も使っていたが、これは習慣化しやすい。
使いすぎると慢性的な副鼻腔炎になりやすいということで、いまは使っていない。
そんなわけで、アレグラはかろうじて私の体質に合うようだった。
1か月分をまとめてもらうのだが、気がついたらここ数か月、ずっともらわずにすんでいる。

今年は去年より花粉の飛散量が多いという。
今日のように天気のいい日は、例年だったら悲惨なことになっていたはずだ。
ところがなんともない。
これはいったいどうしたわけだろう。

花粉症がなおった、という人をひとりかふたり、知っている。
しかし、そんな例はあまりに少ないので、なにかの偶然か、気のせいだろうと思っていた。
が、自分にそれが起こるとは。
なおった原因がわからない。
とにかく、侵入物にたいする過剰なアレルギー反応が正常にもどりつつあることはたしかなように思える。

ここ1、2年でなにか変えた習慣があるだろうか、とかんがえてみる。
ご飯に玄米を混ぜるようになったのは5、6年前のことだから、それが原因とは思えないが、ここ2年ばかりはおなじ玄米でも無農薬のものを実家から送ってもらっている。
それがいいのだろうか。

ここ1、2年といえば、私のなかでもっとも大きいのが、音読療法だ。
この呼吸法は私もみんなにレクチャーしているが、自律神経をととのえ、免疫力を高めることに役立つ。
高めるばかりでなく、正常にする効果も期待できそうだ。
ひょっとして呼吸法が花粉症の症状を和らげてくれたのだろうか。

もうひとつは、羽根木の家という古民家の一角に下宿していた生活から、古いけれど独立した木造アパートの部屋に引っ越したことだ。
ハウスダストの環境が変わったのかもしれない。

これらの原因のどれか、あるいは全部が影響して、症状が激減したのかもしれない。
花粉症に苦しんでいる人がいたら、これらを試してみることをおすすめする。
試してみる価値はあると思う。
あんなに苦しんでいた私がこんなに楽になったのだから。
(オーガナイザー・水城ゆう)

2013年3月5日火曜日

音読療法でおこなうハミング発声の効用

 発声と音読、つまり声を出すことによって、呼吸法とおなじ効果をえられることに加えて、さらにべつの効果を期待できる。
 声を出すためには、呼吸によって声帯を振動させる。声帯は気道の途中にある器官で、声門という筋膜の開閉構造が開いたり閉じたりすることで、発声をコントロールする。声門を閉じれば、そこを空気が押し通ろうととして声帯が振動し、声が出る。声門をあければ、振動はなくなり、そこをただ空気が通るだけとなる。
 音読療法ではハミングという発声法を用いる。これは口を閉じたまま鼻から声を出す方法で、大きな声を出す必要はない。声帯の振動を鼻腔から鼻口へと抜けさせる。
 ゆっくりとハミング発声をおこなうことは、ゆっくりと息を吐きつづけるのとおなじ呼吸法でもあり、ハミング発声そのものが呼吸法になっているともいえる。
 ほかに、ハミング発声は声帯から生まれた振動が骨格や体腔構造をたどって身体のさまざまな部位に伝わっていく。胸や腹、頭にも伝わっている声帯の振動を、実際に手をあてて自分でたしかめることで、自分の声を確認し、さらには自分の身体にたいする意識も持つことができる。
 自分の身体全体が「いまここ」に存在していることの認識をみずから持つことは、こころの安定のために大変効果的である。自分の身体の声帯から伝わってくる振動を確認することで、身体にたいする意識をしっかりと持ってもらう効果が期待できる。
 また、声を出すことは、意識を自分の内側から外側へと向けるきっかけにもなり、内にこもりがちな思考を外部環境や他人に向けることにも役立つ。感覚を外側に開くのは、こころの健康のために大変有効なことである。いきなり声を出すことに抵抗がある人でも、ゆるやかで静かなハミング発声なら抵抗なく声を出しはじめられる。
(オーガナイザー・水城ゆう)

2013年3月3日日曜日

呼吸法の心理的作用

 呼吸法をおこなうとき、音読療法士がこころがけるのは、クライアントがそのことに集中できるように気を配ることだ。
 呼吸に集中してもらう。気道を通って口や鼻を出入りする呼気、吸気をしっかりと観察してもらう。胸や腹がふくらんだりへこんだり、肩があがったりさがったりすることに注意を向けてもらう。自分の呼吸によって起こる空気や身体の動き、音などに集中し、そのほかのことをかんがえないようにする。
 実際、呼吸法をやってもらったあとで、
「いまなにをかんがえていましたか?」
 と質問すると、たいていの人からは、
「呼吸意外のことはなにもかんがえなかった」
 という答えが返ってくる。そのとき、呼吸法はうまくいっているとかんがえられる。なぜなら、呼吸法の目的のもうひとつが「いまここにある自分の身体、ありように集中すること」だからだ。「マインドフルネス」ともいう。
 人がなんとなく不安を感じたり、不機嫌な状態が持続する原因は、いまここにないことをあれこれかんがえてしまうことにある。たとえば、いまここではないどこか別のところにいる家族や友人のことをあれこれ心配してしまう。病気になってないだろうか、事故にあってないだろうか、勉強はちゃんとやってるだろうか、人間関係でなやんでないだろうか。いまここで思いなやんでもしかたのないことを、つい思いなやんでしまう。
 あるいは、まだ起こってもいないことを想像して、重苦しい気分になってしまう。地震が起こったらどうしよう。友だちとけんかしたらどうしよう。親が死んだらどうしよう。ガンにかかったらどうしよう。仕事をくびになったらどうしよう。それはまだ起こってもいないことなので、いまここで思いなやんでもしかたがないのだが、ついついあれこれわるいことを想像してしまう。
 逆に過去に起こったことをいつまでもくよくよと思いなやんでしまう。友だちと喧嘩した、仕事で失敗した、地震で怖い思いをした、だれかから悪口をいわれた、ギャンブルでお金をすってしまった。これらのこともすでに過ぎ去ってしまったことであり、いまここでくよくよとかんがえてもどうしようもないことだ。しかし、気がついたら思い返してしまっていて、いつまでもそのことばかりかんがえてしまう。
 そういった思考癖が私たちの身についてしまっている。これはやむをえない面がある。なぜなら、私たち人間は、他の動物とちがって大脳皮質を飛躍的に発達させた生き物だからだ。大脳皮質を発達させたことによって言語活動や論理思考や情報記憶ができるようになり、大勢の人とコミュニケーションをはかったり、文明社会を築き発展させてきた事実がある一方、その大脳皮質を発達させたことでいろいろ悪いことも起こる。そのひとつが、上記のような想像力や記憶力による思考の働きだ。
 このような思考の働きは人の心に不調を生じさせ、結果的に身体運用能力にも影響をあたえる。この思考からのがれられなくなると、うつにおちいったり、不安神経症になることもある。
 いまここにはないことをくりかえし思い出したり、かんがえつづけてしまうことを「反芻思考」と呼ぶ。いったん反芻思考がはじまると、なかなかそこから抜け出せなくなる。活発に活動していてほかのことをかんがえなければならなくなったり、目の前のことをすぐにやる必要がある場合は、簡単に反芻思考から抜けだすことができるが、ひとりでいるときや眠りにつく前など、反芻思考におちいってなかなか抜け出せなくなることがある。
 自分が反芻思考におちいっていることに気づけば「いかん、いかん」とほかのことに気を向けたり、べつのことをかんがえようとするのだが、それがまた別の反芻思考を引きおこしたり、ふたたび元の反芻思考に立ち戻っていったりすることが多い。そんな経験はだれにでもあることだろう。
 こころの病や心身の不調の原因となるこの反芻思考を断ち切るもっとも簡単で確実な方法が、呼吸法なのである。手順どおりに呼吸法をおこない、自分の呼吸に集中する。自分自身の「いまここ」に意識をむけることで、反芻思考を簡単に断ち切ることができる。反芻思考におちいりそうになったらすぐに呼吸法をやり、「いまここ」に立ちもどるスキルと習慣を身につけることで、もやもやした不安や不機嫌な状態から開放されていくだろう。
 呼吸法を入口とする「いまここ」の意識、マインドフルネスの意識は、なにより有効なこころの病の予防である。
(オーガナイザー・水城ゆう)

呼吸法の生理的作用

 音読療法の呼吸法にはさまざまな効果が期待できる。
 呼吸という身体運動には、たくさんの骨格と筋肉、神経が連動的に関わっている。
 呼吸は肺の体積が縮小したり増大することによって酸素を取りこみ、二酸化炭素を排出するのだが(ガス交換の働き)、肺そのものは筋肉ではなく、みずから収縮・膨張できないいわばたんなる袋である。その袋状の肺を取り囲んでいる胸郭と横隔膜が動くことで、呼吸がおこなわれる。呼吸には筋肉の運動がともなっており、さまざまな筋肉(呼吸筋群)が連動的に収縮したり弛緩したりする。通常、これらの運動はほぼ無意識におこなわれているのだが、これを意識的におこなうことで一種の筋肉トレーニングの効果を生んだり、身体全体の血行を改善したり、健康法としての効果が期待できるようになる。
 また、呼吸法によって不随意神経系である自律神経に意識的にアクセスし、自律神経がつかさどっているさまざまな生理現象を調整することに役立てることができる。

 呼吸は「吸う」ことと「吐く」ことがあるが(ヨガや瞑想法では「止める」もある)、それぞれ使う筋肉が異なっている。
 吸う呼吸では、横隔膜、外肋間筋、胸鎖乳突筋、斜角筋群などのほか、大胸筋、小胸筋、広背筋、僧帽筋、菱形筋なども連動して働いている。
 吐く呼吸では、内肋間筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋などのほか、腹直筋、骨盤底筋群なども連動して働いている。
 このように多くの筋肉群が連動して働いていることを意識しながら呼吸をおこなうことで、これらの筋肉を鍛えたり整えたりして心身のリフレッシュおよび健康促進をはかることができる。

 呼吸法がおよぼす神経作用については古くからよく知られている。
 気持ちが落ち着かないときに深呼吸をするとなんとなく落ち着くのはだれもが経験のあることだろう。座禅や瞑想、ヨガ、古武術などにおいても呼吸はとくに重視されている。古来からさまざまな呼吸法が考案され、経験的にその効果が認められているが、音読療法ではさまざまな呼吸法のエッセンスを抜きだし、だれでも利用できるように整備してある。いわば「いいとこ取り」の呼吸法である。
 呼吸がおよぼす神経作用のなかでもっとも注目されているのが、自律神経におよぼす働きだろう。
 自律神経は不随意神経系と呼ばれていることからわかるように、自分で意図的に操作できない神経系である。たとえば自律神経がつかさどっている体温調節や心臓脈拍の変動などは、通常、意図的におこなうことはできない。「体温をあげろ」とか「心拍数をさげろ」などと自分の身体にお願いしても、普通はそのとおりならない。
 自律神経は生命維持やさまざまな体調の調整をつかさどっている重要な神経系だが、これがなんらかの理由で不調をきたすといろいろな不都合が生じる。自律神経が不調をきたすと、睡眠障害、動悸、息切れ、便秘、下痢など、神経系、循環器系、消化器系、免疫系などの不調につながる。
 自律神経は「活動・消耗」の神経である交感神経と「休息・回復」の神経である副交感神経が対になっているが、現代人は交感神経ばかり昂進させる生活をしいられていることが多く、それが原因で自律神経に失調をきたしている人が多くなっている。ひどい場合には自律神経失調症という病状におちいる。これを正常にもどすためには副交感神経もしっかりと働かせるようにこころがける必要がある。
 しかし、これらは不随意神経系であり、自分の意志では、直接、自在にコントロールできない。そこで、呼吸法が役に立つことになる。呼吸法は、不随意神経系である自律神経にアクセスする唯一の方法なのだ。
 通常、交感神経が昂進しているときには(活動・消耗期の状態)、呼吸は比較的浅く速い状態になっている。副交感神経が昂進しているときには(休息・回復期の状態)、呼吸は比較的深くゆっくりした状態になっている。このことを逆に利用し、呼吸を意識的に深くゆっくりすることで、副交感神経の昂進をうながすのだ。このメカニズムについては、経験的にも実験的にもすでに実証されていて、臨床の場でも多く利用されるようになってきている。
 このように、呼吸法はだれでもできる非常に簡単な健康法といってもいいだろう。そのことを理解した上で、音読療法士は呼吸法をおこなうようにする。
(オーガナイザー・水城ゆう)

2013年3月2日土曜日

音読療法の正当性を担保するもの

 音読療法ではその正当性を重視している。
 さまざまある民間療法や○○セラピーと称するもののなかには、その正当性を疑うものも多々あることは衆知の事実だろう。なかには金銭目当ての詐欺まがいのものもある。
 音読療法においてその正当性を担保するために、以下の三つの要件を重視している。

 (1) 客観性
 (2) 論理性
 (3) 実証性

「客観性」はその事象が主観的ではなく、客観的であること。たとえばある音読エチュードをおこなったとき、それがもたらす効果や変化についてだれかが主観的に思ったり感じたりするだけでなく、ほかの者がそれを観察して効果や変化について確認できるようなことをいう。
「論理性」はその事象について客観的に説明や証明が可能であり、それが論理的であってだれにでも理解できること。
「実証性」はできれば科学的・学術的に実証できることがのぞましいが、現時点において現代科学で必ずしも証明されていない事象でも、長い歴史や経験のなかで観察され現象面で確からしいことが確認されているものも、音読療法では取りいれることがある。たとえば瞑想や古武道、ヨガなどでつちかわれてきた呼吸法など。もっとも、呼吸法のもたらす効果については、最新の医学や検査装置の発展によって徐々に明らかになりつつある。
 以上の要件を重視しながら、できるかぎり正当な体系を築いているのが音読療法である。
(オーガナイザー・水城ゆう)