発声と音読、つまり声を出すことによって、呼吸法とおなじ効果をえられることに加えて、さらにべつの効果を期待できる。
声を出すためには、呼吸によって声帯を振動させる。声帯は気道の途中にある器官で、声門という筋膜の開閉構造が開いたり閉じたりすることで、発声をコントロールする。声門を閉じれば、そこを空気が押し通ろうととして声帯が振動し、声が出る。声門をあければ、振動はなくなり、そこをただ空気が通るだけとなる。
音読療法ではハミングという発声法を用いる。これは口を閉じたまま鼻から声を出す方法で、大きな声を出す必要はない。声帯の振動を鼻腔から鼻口へと抜けさせる。
ゆっくりとハミング発声をおこなうことは、ゆっくりと息を吐きつづけるのとおなじ呼吸法でもあり、ハミング発声そのものが呼吸法になっているともいえる。
ほかに、ハミング発声は声帯から生まれた振動が骨格や体腔構造をたどって身体のさまざまな部位に伝わっていく。胸や腹、頭にも伝わっている声帯の振動を、実際に手をあてて自分でたしかめることで、自分の声を確認し、さらには自分の身体にたいする意識も持つことができる。
自分の身体全体が「いまここ」に存在していることの認識をみずから持つことは、こころの安定のために大変効果的である。自分の身体の声帯から伝わってくる振動を確認することで、身体にたいする意識をしっかりと持ってもらう効果が期待できる。
また、声を出すことは、意識を自分の内側から外側へと向けるきっかけにもなり、内にこもりがちな思考を外部環境や他人に向けることにも役立つ。感覚を外側に開くのは、こころの健康のために大変有効なことである。いきなり声を出すことに抵抗がある人でも、ゆるやかで静かなハミング発声なら抵抗なく声を出しはじめられる。
(オーガナイザー・水城ゆう)
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