2012年8月15日水曜日

横隔膜の働きについて

いま、ボイスセラピー・ハンドブックの改訂作業をしていて、ふと気づいたことがあったので、私自身の知識の整理もかねて書きのこしておく。
といっても、以下の内容は専門的すぎるので、ハンドブックにそのまま掲載することはない。
音読療法マスターコースでは詳しくやるが、ボイスセラピスト講座ではさらっとやる程度のことだ。

呼吸に関する筋肉についての知識のおさらい。
肺はご存知のようにただの「袋」であるから、肺自身は自分で動くことができない。
呼吸は肺胞や胚囊が詰まった肺という袋を、外側からふくらませたり縮めたりすることで生まれる。

肺が収縮すると吐気が生まれる。
肺が膨張すると吸気が生まれる。
肺自体は動かないが、肺を取り囲んでいる骨格と筋肉が動いて、肺の収縮と膨張を作っている。

この肺の収縮と膨張を作っているのは、肋骨と横隔膜の動きだ。
このとき動いているさまざまな筋肉のことを「呼吸筋群」と呼ぶ。
簡単に総称して「呼吸筋」とだけ呼ぶこともあるが、呼吸筋という単独の筋肉はない。

呼吸筋は、空気を吸うときに使う筋肉と、空気を吐くときに使う筋肉に分かれる。

【吸うときに使う筋肉】
(上から)
胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、外肋間筋、横隔膜

【吐くときに使う筋肉】
内肋間筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋、腹直筋

その他、僧帽筋、大胸筋、広背筋、骨盤底筋群といったものも連動している。
ここで注意したいのは、横隔膜だ。
横隔膜は呼吸筋のなかでもっとも重要かつ大きな筋肉で、胸郭の一番下に肋骨にそって張りついている。
横隔膜は息を吸うときには下にさがり、息を吐くときにはドーム状に上にせりあがる。

大きなドーム状になって上にむかって伸びているとき(つまり息を吐いているとき)、横隔膜は弛緩している。
逆に収縮すると面積は狭くなり、大きなドーム状から小さなドーム状へと平たくなっていく。
つまり息を吸っているときに収縮する。

筋肉の収縮は脳からの命令が運動神経によって伝えられて起こるのだが、自分で意識して収縮を起こせない筋肉もある。
不随意筋肉と呼ばれるものだ。
代表的なものとして心臓の筋肉や内臓がある。

不随意筋肉の運動は大脳ではなく、脳幹という生命維持のための装置がつかさどっている。
原始脳といわれる部分で、進化樹の下位にある動物でもこれを持っているが、もちろん人間にもある。
しかし、人間の特徴である大脳意識でも、直接脳幹に命令を与えることはできない。
だから「不随意」と呼ばれるのだ。

不随意筋肉の運動は不随意神経系である「自律神経」と密接な関係にある。
自律神経もまた大脳が直接アクセスできない生命維持装置がつかさどっている。
自律神経は生命維持そのものもそうだが、体調をととのえるためにさまざまなことをおこなっている。
体温調節のための発汗の制御もそのひとつだ。

自律神経が調子を狂わせるといろいろと不都合なことが起こる。
しかし、現代人は自律神経に失調をきたしている人が多く、心身の不調もそれが原因である人が多い。

ああ、話が長くなってしまった。
ちょっとはしょるけど、自律神経を整えるのに役立つのが呼吸法であり、しかも呼吸筋のなかでもとくに身体の中心部に近い深層筋を使う呼吸法は、自律神経のなかでも副交感神経を優位にすることに役立つ。

呼吸筋のなかで深層にある筋肉は、息を吐くときに使うものが多い。
以下、呼吸法/音読につづく。
(オーガナイザー・水城ゆう)

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