2012年8月19日日曜日

ボイスセラピストに求められること


先週、祖母の初盆法事のために父の実家(九州)へ行きました。そこで、母と伯母にストレッチと呼吸法を行いました。(ボイスセラピスト2級取得者は、自分自身、家族やパートナーなど身近な人に施術することができます)数日間、母や伯母と共同生活をしたのですが、趣味や関心事の話になりました。叔母の趣味はコーラスです。今年末、佐渡裕さんが指揮をされる「1万人の第九コンサート」に出演するそうです。そこで呼吸や声の話題になりました。伯母は声を出す時、自分の声が遠くに届いていない気がする、そして肩や首回りに力が入っていると指導者から指摘され、もっと身体を楽にして声を出したいけどその方法がわからない、と話してくれました。そこで、ストレッチ(肩、首、腕中心)、立ち姿勢の確認、呼吸法(3パターン)、ハミング呼吸(呼吸をしながら身体の各部分を意識してハミング)を行うことを提案しました。伯母が期待していたのは、自分の声を高低差を付けて遠くに響かせることができるテクニックとしての発声法なのかもしれないので、今回行う方法は、ストレッチと呼吸で自分の身体で何が起こっているのか意識を向けてみる、声を出すことで身体が変化することを感じてみる、楽しんでみる、その先に何かテクニック的なことがあるのなら習得できるのではないかと伝え、伯母もそれに同意してくれました。また、母も以前朗読サークルに所属していたり声を出すことに気持ちよさを感じているがもっと感じてみたいと言ってくれたので、一緒に行うことにしました。
実施後の感想として伯母は「ゆっくり落ち着いた気分になれた。声を出す前のストレッチで身体が緩む感覚があった、実際にコーラスの練習前にこのストレッチをしてみる」と言っていました。
私自身の感想として、ボイスセラピスト1人が2人(特に長く細く呼吸をすることが難しい方)に同時に進めていく時、工夫をしたほうが良いところがたくさんあることを発見しましたが、そういうテクニック的な部分ではなく、もっと根本的なことが大切だと感じました。それは、セラピストが「説明しすぎない、喋りすぎない」ということです。
なぜ音読療法では呼吸や音読を行うのか、何が肝になっているのかなど、ボイスセラピスト講座で教えてもらったことは、どうしても話したくなります。話したら相手がどう感じてくれるのか知りたくなります。でもここで、セラピスト側が自分で進めたい会話の流れが本当にこのまま進めていいのかと立ち止まってみることが大切だと思います。
相手の中に知りたいという興味がないと、知識のお披露目になってしまい相手の興味を逆に軽減させてしまう危険性があります。せっかく一緒にいる時間が一方通行のコミュニケーションになってしまうのは悲しいことだと感じます。目の前の相手は、この内容に興味があるのか、もっと知りたいと思っているのか、そもそも、何が目的で今この場にいるのかについて、相手を尊重しながら相手の目的を共感することが必要になります。その方法として、相手が使う言葉、相手の表情などからその人の感情に注目してみる。そして、その感情が生まれる理由(その人が何を大切にしているのか)を観察してみることです。出来れば、その観察が正しいのかを相手に聞いてみることです。
この相手を尊重する姿勢が相手に届いた時、「どうして、今とても落ち着くのだろう。」とか「今日、なぜかとても心地いい時間が過ごせた」という感想が聞けるかもしれません。ここで初めて、自分が話したい音読療法の肝や相手にとって興味がある部分の専門的な話をすればいいのではないかと思います。まずはセラピストが共感的にその場の人と関わること、その場の人が今感じていることが話しやすくなる場作りをすることが、ボイスセラピストに求めれられていることなのかもしれません。
(共感的に相手に関わるのは相当訓練が必要なようです。目下練習中なのでまだ手さぐりです。)

写真:母、伯母に呼吸法をしているところ。

※音読療法協会オーガナイザー水城ゆうさんが以前掲載された記事
「ボイスセラピストにたいせつにしてもらっていること」(2012年7月24日)もぜひご覧ください。」http://voicetherapy.blogspot.jp/2012/07/blog-post_24.html

(銀座教室事務局オペレーター 菜穂子)





2 件のコメント:

  1. セラピスト、オペレーターとしての菜穂子さんのしっかりした真摯な姿勢にいつも心うたれます。

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  2. コメント、ありがとうございます。読んでいただく方がいらっしゃると励みになります。セラピストとしてはまだまだこれからです。多くの方と出会い一緒に楽しみながら進んでいきたいと思っています。

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